アメリカザリガニ・アカミミガメなど身近な「外来種」が生態系に悪影響を?

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アメリカザリガニとアカミミガメのイラストPoint
アメリカザリガニやアカミミガメは、全国各地に定着している身近な生き物で、ペットとして飼育している人も少なくないでしょう。しかし、これらは海外から入ってきた「外来種」であり、日本の生態系への影響が懸念されています。この記事では、外来種を扱う上で知っておくべき「外来生物法」について解説します。

1外来種が生態系にもたらす悪影響とは?

外来種とは、もともとその地域に生息していなかったのに、他の地域から入ってきた生物のことです。ただし、渡り鳥や、海流に乗って移動してくる魚類、風に乗って種子が運ばれてくる植物などは含まれず、あくまで人間の活動によって持ち込まれるものを指します。
言葉のイメージから「外来種=珍しい存在」と思われるかもしれませんが、実は日本には分かっているだけでも動植物合わせて2千種もの海外から持ち込まれた外来種が生息しています。例えば、クローバーとして知られるシロツメクサは牧草として、釣り好きにはおなじみのブラックバスは釣りや食用として海外から持ち込まれたものです。

外来種の中には、もともとその地にいた在来種に悪影響を及ぼすものも少なくありません。食料や生息環境を奪ったり、在来種を捕食したりと、様々なかたちで地域の生態系や生物多様性を脅かすことがあります。加えて、毒を持つ外来種や、病原菌を保有する外来種が、人の健康・安全に被害を及ぼすことも考えられます。さらに、農産物を食べたり、畑や漁場を荒らしたりと、農林水産業への影響も懸念されています。

外来種による被害を予防するためには、次の3原則を守ることが重要です。

外来種被害予防の3原則

  1. 入れない
    悪影響を及ぼすおそれのある外来種を、自然分布域から非分布域へ「入れない」。
  2. 捨てない
    飼育・栽培している外来種を適切に管理し、「捨てない」(逃がさない・放さない・逸出させないことを含む)。
  3. 拡げない
    すでに野外にいる外来種を他地域に「拡げない」(増やさないことを含む)。

外来種に関わる際は、この原則をしっかりと理解し、適切な対応を心がけましょう。

2「外来生物法」ってどんな法律?

外来種による被害を防止するため、平成17年(2005年)に施行されたのが、略して「外来生物法」と呼ばれる「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」です。この法律では、生態系や人体、農林水産業に被害をもたらしかねない、海外から持ち込まれた外来種を「特定外来生物」に指定し、その飼育や栽培、保管、運搬、輸入などを規制しています。

令和5年(2023年)9月時点で、哺乳類25種類、鳥類7種類、爬虫類22種類、両生類15種類、魚類26種類、昆虫類27種類、甲殻類6種類、クモ・サソリ類7種類、軟体動物など5種類、植物19種類が特定外来生物に指定されており、具体的にはアライグマ、カミツキガメ、ウシガエルなどが該当します。

特定外来生物に指定された外来生物は、以下の事項が禁じられています。

  1. 飼育、栽培
  2. 運搬(生きたまま移動させること)
  3. 保管
  4. 輸入
  5. 野外への放出、植栽、は種(種をまくこと)
  6. 譲渡し(販売を含む)、譲受け(購入を含む)、引渡し、引取り

外来生物法の詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。

32023年6月、アメリカザリガニ・アカミミガメが「条件付特定外来生物」に指定

令和5年(2023年)4月に改正外来生物法が施行され、それに基づいて、同年6月にはアメリカザリガニとアカミミガメが、従来の特定外来生物の規制の一部が適用除外となる「条件付特定外来生物」に指定されました。なお、条件付特定外来生物も、法律上は特定外来生物であり、令和5年(2023年)6月時点では、条件付特定外来生物に指定されている生物は、アメリカザリガニとアカミミガメの2種のみです。

アメリカザリガニやアカミミガメは全国各地に定着し、在来種や地域の生態系に大きな影響を与える可能性があります。とはいえ、どちらも他の特定外来生物に指定されている生物と比べて身近な生物で、飼育者がとても多いため、単に特定外来生物に指定して飼育などを規制すると、「飼育などの申請手続きが面倒」といった理由で野外に放してしまうケースが増え、かえって生態系への被害が生じるおそれがあります。そこで、特定外来生物に指定しつつ、飼育などの一部の規制を適用除外とする「条件付特定外来生物」に指定することで、飼育者には引き続き責任を持って飼育してもらうことにしたのです。

「条件付特定外来生物」のポイント

アメリカザリガニとアカミミガメが「条件付特定外来生物」に指定されたことについてのポイントは、大きく以下の3点です。

ポイント1:寿命を迎えるまで大切に飼育して!

「条件付特定外来生物」への指定後も、ご家庭でペットとして飼育されているアメリカザリガニやアカミミガメは、これまでどおり飼うことができます。飼育に当たっての申請などの手続きは不要です。アメリカザリガニやアカミミガメが寿命を迎えるまで大切に飼育してください。

ポイント2:野外に放さないで!

アメリカザリガニやアカミミガメを池や川など野外に放すことは禁止となります。適切な管理を行わずにザリガニやカメが自力で逃げ出した場合も違法となる場合があるので、逃げ出さないよう飼育する必要があります。なお、これらの違反があった場合には、これまでの特定外来生物の扱いと同様に重い罰則(懲役又は罰金)が科されます。

ポイント3:飼い続けることができなくなったときは?

アメリカザリガニやアカミミガメを飼い続けることができなくなった場合は、友人や知人、新しい飼い主探しを行っている団体などに譲ってください。無償であれば申請などの手続きは不要ですが、責任を持って飼うことができる相手を探してください。また、無償であっても不特定又は特定多数の人に配り分けるような「頒布」に当たる行為は禁止となります。

アメリカザリガニとアカミミガメに関する規制内容

アメリカザリガニとアカミミガメについては、捕獲や一般家庭などでの飼育、無償での譲渡しについては許可なしで行うことができます。一方で、野外への放出、販売・頒布・購入などについては通常の特定外来生物と同様の規制がかかります。違法行為は、重い罰則(懲役又は罰金)の対象となる場合がありますので、ご注意ください。
※捕獲後、持ち帰った後に野外に放すことは規制の対象となるため、安易に持ち帰らないようにご注意ください。捕獲して、その場ですぐに放すことは規制の対象とはなりません。

アメリカザリガニとアカミミガメの規制内容を示したイラスト。捕獲は申請不要
捕獲

アメリカザリガニとアカミミガメの規制内容を示したイラスト。飼育は申請不要
飼育

アメリカザリガニとアカミミガメの規制内容を示したイラスト。少数への無償譲渡は申請不要
少数の相手への無償譲渡

アメリカザリガニとアカミミガメの規制内容を示したイラスト。放出は原則禁止。
放出

アメリカザリガニとアカミミガメの規制内容を示したイラスト。販売などは原則禁止。
販売・頒布・購入


アメリカザリガニとアカミミガメの規制内容については、以下のウェブサイトをご覧ください。

4アメリカザリガニ・アカミミガメを飼う前に

アメリカザリガニやアカミミガメは、身近な生き物であり、こどもが近所の川や池で捕まえてきて飼い始めることも珍しくありません。そうした行為自体は規制されませんが、実際に捕まえるなどして飼い始める前に、これらの生き物についてよく考えてみてください。

アメリカザリガニについて

アメリカザリガニは、もともと1920年代後半に、ウシガエルの餌として利用する目的でアメリカから輸入されました。養殖場から逃げ出したアメリカザリガニが繁殖するとともに、水辺の生き物として親しまれ、ペットショップや露店のザリガニ釣りなどを介して飼育されるケースが増加。それらが捨てられたり、逃げ出したりすることで広く全国に分布し、定着するようになりました。

アメリカザリガニは水生植物を消失させたり、水生昆虫を捕食したりして生態系を荒らすほか、ザリガニペストや白斑病などを媒介するリスクがあり、ニホンザリガニなどの在来種に大きな影響を与える可能性があります。


アメリカザリガニ


ダイゴースト(アメリカザリガニの品種)

写真提供:(一財)自然環境研究センター

アメリカザリガニの詳細情報や特定外来生物(甲殻類)の見分け方については、以下のウェブサイトをご覧ください。

アカミミガメについて

アカミミガメの幼体が「ミドリガメ」の通称で輸入され始めたのは1950年代後半のことです。以来、ペットとして人気を博し、全国の世帯における飼育数は約110万世帯で約160万匹と推定されています(令和元年(2019年)時点)。

しかし、飼育されていた個体が野外に放たれることなどにより、今では北海道から沖縄まで全都道府県に広く定着しており、日本に在来のカメ類の餌や日光浴場所などを奪うとともに、水草や水生生物を捕食するなどして生態系に影響を及ぼすことが懸念されています。なお、日本国内にいるアカミミガメのほとんどは、耳の赤い亜種ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)ですが、耳が赤くないキバラガメやカンバーランドキミミガメの2亜種も条件付特定外来生物に含まれます。


アカミミガメ


アカミミガメの幼体(ミドリガメ)

写真提供:(一財)自然環境研究センター

アカミミガメの詳細情報や特定外来生物(爬虫類)の見分け方については、以下のウェブサイトをご覧ください。

アメリカザリガニやアカミミガメの飼育に当たって

アメリカザリガニやアカミミガメは、国内の生態系への悪影響が懸念されるものの、決して恐ろしい生き物でも、悪い生き物でもありません。本来の生息地では、ごく普通の生き物として暮らしていたものが、人間の手で異なる環境に持ち込まれたにすぎないのです。他の特定外来生物も含めて、大切な命であることを忘れてはいけません。

飼育下のアカミミガメはとても長生きで、寿命は20から40年といわれています。アメリカザリガニも飼育下では5年ほど生きる場合があります。一度飼育を始めたからには、「飼育が面倒になった」「大きくなって邪魔になった」「引っ越し先に連れていくのが大変」など、身勝手な理由で野外に放したり、逃がしたりすることは違法となります。寿命を迎えるまで、本当に責任を持って飼い続けることができるのか、今一度、しっかり考えてみましょう。

5困ったときの相談窓口は?

規制の内容やアメリカザリガニ・アカミミガメの飼育等に関するお問い合わせは、以下をご参照ください。

<環境省 アメリカザリガニ・アカミミガメ相談ダイヤル>

受付時間 午前9時から午後5時(12月29日から1月3日は除く)
※通話料は発信者の負担となります。

外来種を扱う際の具体的な手続きなどのお問い合わせは、全国の地方環境事務所などにお願いします。

 

まとめ

もともとその地域に生息していなかった外来種は、地域の生態系や生物多様性を脅かすだけでなく、人間の健康・安全に被害を及ぼすことも考えられます。アメリカザリガニやアカミミガメも外来種であり、外来生物法に基づく規制が設けられています。飼育に当たって、どのような規制があるのかをしっかりと把握し、最後まで責任を持って飼うようにしてください。

(取材協力:環境省 文責:政府広報オンライン)

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