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April 2024

日本でもっとも遅咲きのサクラの名所

  • 清隆寺で満開となったチシマザクラ
    Photo: 根室市
  • 葉が開くと同時に淡い紅色の花が開くチシマザクラ
  • 札幌市内にある観光スポット「札幌市時計台」にもチシマザクラが植えられている。
  • 明治公園のチシマザクラ
清隆寺で満開となったチシマザクラ Photo: 根室市

日本本土最東端に位置する街、根室(ねむろ)市(5ページ参照)には、5月になって花の見ごろを迎える、日本一遅咲きのサクラ「チシマザクラ」が生育している。根室市の担当者に、そのサクラの特徴や魅力などを聴いた。

根室市は、太平洋とオホーツク海に面し、冬には流氷の景色が見られる根室海峡、日本の本土最東端の地・納沙布(のさっぷ)岬などの観光地がある。水産加工業も盛んで、おいしい魚介類を目当てに訪れる人も多い。そんなさまざまな魅力のある根室観光の一つに、日本一遅咲きのチシマザクラがある。チシマザクラについて、根室市商工労働観光課の清水雄大(しみず ゆうだい)さんはこう話す。「根室市内にある清隆寺(せいりゅうじ)*の敷地内に咲くチシマザクラは、1869年に国後島(くなしりとう)**から市内に持ち帰られたものが、1903年に境内に移植されたものです。すでに樹齢は150年を超えた大木で、例年5月上旬から下旬にかけて満開となります。ソメイヨシノなどに比べると、チシマザクラは1〜5mほどと比較的低い樹にしかならず、枝が横にのびる性質があります。そのため、目線の高さでサクラの花を、じっくりと観察し、楽しんでいただけます」。

チシマザクラの花は寄り添うように数個まとまってつき、花の径は2㎝から4cm、花びらの先はわずかに凹んでいる。花は開花時と終わりが淡い紅色で、満開時には白色へと色が変化するため、その移り変わりも楽しむことができる。強く香ることも特徴だ。

葉が開くと同時に淡い紅色の花が開くチシマザクラ
札幌市内にある観光スポット「札幌市時計台」にもチシマザクラが植えられている。

「毎年、根室市内の明治公園(めいじこうえん)***に咲く、チシマザクラの開花に合わせて、ライトアップを期間限定で実施するなど、たくさんの方に楽しんでいただける企画を用意しています」と清水さん。明治公園のチシマザクラは、有形文化財に指定されている古いレンガ造りのサイロ****と一緒に撮ったものが、写真映えするとフォトスポットとしても人気の場所だ。

地球温暖化の影響か、年々開花が早まっている日本の桜前線*****だが、3月下旬から4月、他の地域のお花見を逃してしまっても、根室市が位置する日本最北部の北海道ではまだ咲いていないことが多い。清水さんはこう話す。「5月の根室市の遅い春を味わいに、日本一遅咲きのチシマザクラを見にきませんか。きっと忘れ得ぬ旅のよい思い出になるでしょう。」

明治公園のチシマザクラ

* 北海道根室市にある根室駅に近い真言宗の寺。
** 北海道知床半島から見て根室海峡の東の対岸に位置する島。1945年の終戦後までは日本人住民がいたが退去させられ、ロシア連邦が実行支配していることから、日本政府は返還を求めている。
*** 明治公園は、1875年に作られた牧場の跡地を整備して公園としたもの。
**** 冬季の家畜飼料にする牧草類を生に近い状態で貯蔵する倉庫。明治公園のレンガ造サイロは1932年から1936年にかけて建設された円筒形のタワーサイロ。
***** 桜前線とも呼ばれる。日本列島を南から北へと桜の開花が進んでいくことを、天気図の前線に似ることからついた名称。三月中旬に九州や四国南部から北上を始め、五月上旬に北海道に至る。