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April 2024

福島県喜多方市シダレザクラの並木道

  • 約1,000本のシダレザクラの並木道。サクラのトンネルのように見事に咲き誇る。
  • 日中線のさよなら運行を務めたSLとシダレザクラ(「日中線記念自転車歩行者道路」のSL広場で展示)
  • 日中線しだれ桜プロジェクトで植樹したシダレザクラの一例。背景には雪をいだく飯豊山(いいでさん)が見える。
    Photo: NPO法人日中線しだれ桜プロジェクト
  • 「喜多方さくらまつり」におけるシダレザクラのライトアップの様子
約1,000本のシダレザクラの並木道。サクラのトンネルのように見事に咲き誇る。

福島県喜多方(きたかた)市には、鉄道路線の跡地を整備した全長3㎞にも及ぶシダレザクラの並木道がある。シダレザクラの並木としては国内最大級規模で、人気情報サイトなどでも行ってみたい桜名所ランキング*で上位にあがる注目スポットだ。

東北地方の南にある福島県の西寄りの北部に位置する喜多方市には、国内最大級規模となるシダレザクラの並木道「日中線記念自転車歩行者道路」(以下「並木道」)がある。これは、廃線となった国鉄日中(にっちゅう)線の鉄道路線の跡地を整備した遊歩道で、旧喜多方駅から全長約3㎞にわたり約1000本のシダレザクラが楽しめる。

日中線のさよなら運行を務めたSLとシダレザクラ(「日中線記念自転車歩行者道路」のSL広場で展示)

日中線は1938年に開通し、喜多方駅から、熱塩(あつしお)温泉や日中温泉の玄関口・熱塩駅までの全5駅11.6㎞を蒸気機関車(SL: Steam Locomotive)が走行していた。しかし、1974年、利用客の減少でSLの運行が終了。さらに、1984年に赤字のため廃止となった。その後、喜多方市は市民のために、旧喜多方駅と隣の駅だった旧会津村松駅までの約3㎞の鉄道路線跡地を自転車や歩行者専用の遊歩道として整備し、シダレザクラを道の両側に植えて並木道とし1988年にオープンした。当初、並木に植えるサクラはソメイヨシノも含め検討が始められたが、最終的にシダレザクラが選ばれたのは、当時の市長の唐橋 東(からはし あづま)さんの提案によるものだ。福島県には三春(みはる)町の「三春滝桜」**というシダレザクラの名木があり、同県出身の著名な日本画家の大山忠作(おおやま ちゅうさく)の名作「滝桜」に描かれるなど、古くからなじみ深いサクラであるということによるという。

このシダレザクラの並木道であるが、市民有志によって、もっと延ばしていくプロジェクトが進行中だ。喜多方市の有志が2013年に立ち上げた団体「NPO法人日中線しだれ桜プロジェクト」の理事長である唐橋脩(からはし おさむ)さんはこう語る。

「このシダレザクラの並木道を、日中線の終点であった旧熱塩駅まで延ばす活動を続けています。目標は、日中線の跡地11.6㎞全てをシダレザクラの並木道にして、後世に残る観光資源にすることです」

日中線しだれ桜プロジェクトで植樹したシダレザクラの一例。背景には雪をいだく飯豊山(いいでさん)が見える。 Photo: NPO法人日中線しだれ桜プロジェクト

「NPO法人日中線しだれ桜プロジェクト」は、発足10年余りで、新たに258本のシダレザクラを植えたという。(2024年3月末現在)。

NPOが植えたシダレザクラは喜多方市郊外の田園地帯にあり、春になってもなお雪をまとった飯豊山(いいでさん)***を望みながら、花を観賞できるという。

「喜多方さくらまつり」におけるシダレザクラのライトアップの様子

例年、4月中旬から本格的な開花期を迎える並木道のシダレザクラ。喜多方市では、毎年、「喜多方さくらまつり」を開催するが、今年(2024年)は4月5日から24日までだ。「期間中は多くの観光客が訪れ、開催期間中は、午後6時30分から午後8時まで並木道でもシダレザクラのライトアップが楽しめます。当NPOが植えたところは郊外にあり、樹木間に余裕があるのでシートを敷いてのお花見等も可能です。ぜひ足を伸ばしていただきたいですね」やがて、春の喜多方市で11.6㎞ものシダレザクラの並木道を見ることができる日が来ることも楽しみだ。

* ウォーカープラス(株式会社KADOKAWA)の〈東北の「みんなが行ってみたい」桜名所・お花見2024ランキング1位〉
** 福島県田村郡三春町にある樹齢推定1000年超といわれるシダレザクラ。1922年に、桜の木としては初めて国の天然記念物に指定された。
*** 福島・山形・新潟三県にまたがる飯豊連峰の主峰。標高2,105m。