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April 2024

古都金沢の春を彩る松月寺のサクラ

  • 金沢のシンボルとして親しまれてきた松月寺のサクラ
    Photo: 金沢市役所
  • ソメイヨシノと比べると葉や花が大きいのが松月寺のサクラの特徴 Photo: 金沢市役所
  • 大通りへと張り出して咲く松月寺のサクラ
    Photo: 金沢市役所
  • 満開の松月寺のサクラ
    Photo: 金沢市役所
金沢のシンボルとして親しまれてきた松月寺のサクラ Photo: 金沢市役所

石川県の県庁所在地、金沢市には歴史ある建造物が数多く残され、風情あふれる景観が訪れる人を魅了する。中でも春の見どころとして親しまれているのが、松月寺(しょうげつじ)のサクラだ。

金沢市の中心部にある寺町通りの一角にある松月寺は、1615年に今の場所に建立されたと言われている。

「境内には約15mの高さがある樹齢約400年のサクラの木があり、一部が大通りへと張り出しています。このサクラは国の天然記念物にも指定されており、古くから金沢のシンボルとなっています」

と金沢市文化財保護課の担当者は言う。この見事な老大木のサクラはその大きさからか「大桜」、または元々あった場所がお城であることから「御殿(ごてん)桜」と地元住民たちからは呼ばれているそうだ。

大通りへと張り出して咲く松月寺のサクラ Photo: 金沢市役所

「寺伝によりますと、1648年に小松城に隠居していた加賀藩の三代目藩主・前田利常(まえだ としつね*)がお城の中にあったこの樹を松月寺の住職・至岸和尚(しがんおしょう)に与え、現地に移植させたものとされます」

このサクラの樹の美しさは、なんといっても大ぶりな葉や花が持つ力強さにある。

ソメイヨシノと比べると葉や花が大きいのが松月寺のサクラの特徴 Photo: 金沢市役所

「品種は「ショウゲツジザクラ」とされ、ヤマザクラの変種とみられています。ソメイヨシノなどと比べると、葉・花がともに大きいのが特徴で、花の径は4.0㎝から4.5㎝ほどになります。大通りまで枝張りを大きく広げたその姿が、400年という歴史の深さを伝えているようです」

古くから多くの文化人に愛されてきた松月寺のサクラ。このサクラを題材に文学作品も生まれた。18世紀前半頃に活躍した儒学者である室 鳩巣(むろ きゅうそう**)は、このサクラを伝統的な詩(漢詩)として残した。また、金沢市出身の近代の小説家・泉鏡花(いずみ きょうか。1873年~1939年 ***)は小説の中でこのサクラを登場させている。

松月寺のサクラの花の見ごろは、その年によって異なるが、おおよそ4月上旬から中旬ごろだそうだ。

満開の松月寺のサクラ Photo: 金沢市役所

「海外から訪れた方でも、松月寺のサクラの力強さに魅了されて写真を撮られている方をお見かけします。今年(2024年)1月1日の地震(令和6年能登半島地震)では、幸い、特に被害はありませんでした。現地の山門前には、海外からの観光客の方にこの樹を紹介するための、英語、中国語、韓国語といった多言語化看板も設置されていますので、ぜひ世界中から多くの方にお越しいただき、このサクラを間近に楽しんでいただけたらと思います」

* 1594年生まれ、1658年没の武将・大名。加賀藩の藩祖・利家から数えて三代目。
** 1658年生まれで1734年没した。 儒学者。当初加賀藩に仕え、後に徳川幕府に仕えた。松月寺(しょうげつじ)のサクラについて「遊松月寺看桜花」という漢詩を残した。
*** 明治後期から昭和初期(1873年〜1939年)に活躍した日本の小説家。幻想的な作品が多く、川端康成ら後世の小説家に多くの影響を与えた。松月寺(しょうげつじ)のサクラは、小説「桜心中」に登場する「江月寺(こうげつじ)の桜」のモデルとなった。