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April 2024

淡い緑色の花を咲かせる珍しいサクラ

  • 御衣黄は淡い緑色にピンク色の筋が入った花びらが特徴。
    Photo: 雲南市
  • さわやかで気品のある御衣黄。
    Photo: 雲南市
  • 五分咲きの御衣黄。まだ花色も濃い緑色だ。 Photo: 雲南市
  • 三刀屋川河川敷公園の近くで御衣黄を鑑賞できる。
御衣黄は淡い緑色にピンク色の筋が入った花びらが特徴。 Photo: 雲南市

島根県雲南(うんなん)市に緑色の花が咲く珍しいサクラを楽しめる桜並木がある。雲南市観光協会の担当者に話を聴いた。

日本の中国地方、島根県の東部に位置する雲南市。国道54号沿いの三刀屋(みとや)城跡のふもとを流れる三刀屋川河川敷に両岸2kmほどの桜並木がある。そこで緑色の花を咲かせるサクラが御衣黄(ぎょいこう)だ。その昔、貴族が着用する装束を「御衣(ぎょい)」と呼んだが、その中でも萌黄色(もえぎいろ*)に似た色合いをもつ花色から、この名がつけられたという。雲南市観光協会の須山美穂(すやま みほ)さんはこう説明する。

五分咲きの御衣黄。まだ花色も濃い緑色だ。 Photo: 雲南市

「この御衣黄は、今から70年ほど前に奈良県吉野町の古木を移植したことが始まりです。ヤエザクラの一種で、淡い緑色にほのかにピンク色の筋が入った花びらが特徴で、一花に10枚から15枚の花びらが重なって咲きます。この三刀屋川河川敷公園と、対岸の三刀屋城址公園に、合わせて約120本が植えられており、珍しい緑色一色の花見が鑑賞できる希少な場所だと思います」

三刀屋川河川敷公園の近くで御衣黄を鑑賞できる。

花は咲き始めの時期は緑色が濃く、開き始めるとだんだんと薄くなり、散る頃には中心部にピンク色の筋をさす。見頃は、例年4月中旬頃という。「御衣黄は遅咲きのサクラ。同じ桜並木に染井吉野もたくさん植えられていますが、この染井吉野に遅れて2週間ほどで開花します。染井吉野の花見と合わせると2022年は約3万人の人出となる人気のお花見スポットですが、御衣黄の見頃時期は、比較的ゆっくり鑑賞いただけます。夜はライトアップされ夜桜も楽しめますよ」

さわやかで気品のある御衣黄。 Photo: 雲南市

雲南市はサクラの名所が多く、サクラを愛する街だ。同市ではサクラの手入れを行う「桜守(さくらもり)」という専門職が任命されていて、老木の保護や新たな育成に取り組んでいるという。また、市は、市民団体「雲南市さくらの会」や多くの地域団体によるサクラの保存育成活動への支援などを行い、市と市民と協同でサクラの美しいまちづくりに取り組んでいる。

御衣黄の緑の花の色はとても癒されるという。ぜひ、このサクラの咲く季節、この町をゆっくりと訪れてみてほしい。

* 日本の伝統色の一つ。春先に萌え出る草木の若葉のような明るい黄緑色のこと。