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April 2024

環境負荷低減の取組の「見える化」―温室効果ガス削減への貢献と生物多様性保全への配慮―

  • ラベルを貼付した農産物が販売されている様子
    Photo: MAFF
  • 坂本農林水産大臣によるラベルの紹介の様子(大臣記者会見)
    Photo: MAFF
  • 生物多様性の保全に資する取組の例(冬期湛水)。米について、水田での生物多様性保全の農法(ex. 化学農薬や肥料の低減、冬期湛水、ビオトープ)が実施されているかにより生物多様性保全の農業者の努力の等級が評価される。
  • 2024年3月より活用が可能となった新たな「見える化」等級ラベル
  • 米についてはガイドラインに従い、「生物多様性保全」の等級も合わせてラベル表示可能(ラベルの下半分)
  • 「見える化」ラベルのポスター
ラベルを貼付した農産物が販売されている様子 Photo: MAFF

農林⽔産省では、持続可能な食料システムを構築するため、食料システム全体での環境負荷低減の取組や国民理解の醸成に向けて、生産者の環境負荷低減の取組の「見える化」を推進している。地球温暖化防止に資する「温室効果ガス削減への貢献」や、「生物多様性の保全」への取組を、農産物に星の数(1から3)で表示した等級ラベルで分かりやすく表示することで、生産者の環境負荷低減の努力を消費者に伝える。等級ラベルは、消費者の農産物の選択に役立つ。本稿では、その仕組みの概要を紹介する。

取組の背景

農林水産省は2021年5月に、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるための新たな政策方針として「みどりの食料システム戦略」を策定。2022年には「みどりの食料システム法」が施行され、国が講ずべき施策として環境負荷低減の取組の「見える化」が位置付けられた。温室効果ガス削減への貢献と生物多様性保全への配慮といった環境課題を、食料システム関係者(調達から生産、加工・流通、消費まで)全体で自分事として認識し、環境負荷低減のための実践的な行動を実施していくことが期待されている。

坂本農林水産大臣によるラベルの紹介の様子(大臣記者会見) Photo: MAFF

「見える化」等級ラベルのスキームとこれまでの歩み

「見える化」等級ラベルは前述のような背景で始められた仕組みだ。化学肥料・化学農薬や化石燃料の使用量、バイオ炭の施用、水田の水管理などの栽培情報を用いて、温室効果ガスの排出と吸収を定量的に算定し、地域の慣行農法と比べた削減への貢献度合いに応じた星の数で農産物に分かりやすく表示する。

生物多様性の保全に資する取組の例(冬期湛水)。米について、水田での生物多様性保全の農法(ex. 化学農薬や肥料の低減、冬期湛水、ビオトープ)が実施されているかにより生物多様性保全の農業者の努力の等級が評価される。

2022年度に米、トマト、キュウリの3品目で実証が開始されたこの仕組みは、2023年度には米、野菜類、果樹類、いも類など23品目に対象品目を拡大して実証を行った。今年(2024年)3月より、新たなラベルデザインにするとともに、米については「生物多様性保全」への取組も評価対象として追加された。この仕組みのさらなる周知を図っている。

2024年3月より活用が可能となった新たな「見える化」等級ラベル
米についてはガイドラインに従い、「生物多様性保全」の等級も合わせてラベル表示可能(ラベルの下半分)

この仕組みが開始されてから、全国のべ700を超える店舗や飲食店等の協力の下、実証が進められてきた。2022年度・2023年度実証での消費者に対するアンケートでは、「見える化」等級ラベルのような分かりやすい表示をしている農産物を扱う店舗への印象として、95%が「良い印象」と回答しており、消費者の環境配慮への関心の高さが示唆された結果となっている。

「見える化」ラベルのポスター

日本国政府は、温室効果ガスの排出量に関して、2030年度までに46%削減の目標、2050年までにカーボンニュートラルの実現を打ち出している。農林水産省では温室効果ガス排出量の算定支援や販売資材の提供を行い、環境に配慮する生産者・事業者に対する支援を引き続き実施していく。

温室効果ガス削減に関する等級の算定方法

消費者が「見える化」等級ラベルが表示された農産物を選ぶことで、温室効果ガス削減への貢献や生物多様性保全に配慮した持続可能な生産を応援できるということが、この仕組みの最大のポイントだ。皆さんも「見える化」ラベルのついた農産物を見つけた際にはぜひ手に取ってみて、活用していただきたい。

参考URL
» https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/being_sustainable/
 mieruka/mieruka.html