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April 2024

「北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI」―北陸を舞台に工芸・アートの魅力を世界に発信―

  • 富山県富山市の富岩運河環水(ふがんうんがかんすい)公園に展示された久保寛子(くぼ ひろこ)の作品「やまいぬ」。それぞれ、高さ3.2m・幅4.5m、高さ3.5m・幅5m。鉄やプラスチックメッシュなどの工業資材を使用し、ダイナミックな作品を生み出している。
    (「GO FOR KOGEI 2023」より) Photo: Watanabe Osamu
  • 富山県富山市にある桝田酒造店の酒蔵(さかぐら)の扉を飾る葉山有樹(はやま ゆうき)の作品「双竜」。陶芸家として自らが磁器の紋様として描いてきた図柄をベースとした作品。
    (「GO FOR KOGEI 2023」より) Photo: Watanabe Osamu
  • テキスタイルデザイナー・須藤玲子(すどう れいこ)の作品でファブリックのインスタレーション「扇の舞」。富山県高岡市の勝興寺(しょうこうじ。本堂等は国宝指定)の渡り廊下が多彩な扇の回廊になった。(「GO FOR KOGEI 2021」より)
    Photo: Masahiro Katano
  • 彫刻家・コムロタカヒロが創造した空想上の木製のドラゴン。画像左から、「Dog Dragon」「Savage Dragon」「Bat Dragon」「Demonic Dragon」。高さはいずれも約149〜150㎝。
    (「GO FOR KOGEI 2023」より)
    Photo: Watanabe Osamu
  • 「GO FOR KOGEI 2023」の会場となった中島閘門(なかじま こうもん)エリア
    Photo: Watanabe Osamu
富山県富山市の富岩運河環水(ふがんうんがかんすい)公園に展示された久保寛子(くぼ ひろこ)の作品「やまいぬ」。それぞれ、高さ3.2m・幅4.5m、高さ3.5m・幅5m。鉄やプラスチックメッシュなどの工業資材を使用し、ダイナミックな作品を生み出している。(「GO FOR KOGEI 2023」より) Photo: Watanabe Osamu

「日本博2.0」は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の機運醸成やインバウンド需要の回復、国内観光需要の一層の喚起を目指しつつ、「日本の美と心」を体現する我が国の文化芸術の振興及びその多様かつ普遍的な魅力を国内外に発信している。国内の文化施設、芸術団体などさまざまな主体が多種多様な事業を実施、参画している一大プロジェクトだ。多くの事業の中から、今月号は、「北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI」を紹介する。

北陸を舞台に工芸・アートを発信するプラットホーム

「GO FOR KOGEI」は、2020年度からスタートした富山、石川、福井の北陸三県を舞台に工芸・アートの魅力を世界に向けて発信する祭典だ。

北陸三県には、陶器、漆器、友禅染*、ガラス工芸、鋳物**、和紙など伝統的な工芸品を制作する工房が数多くあり、伝統の「技」を磨き、次世代を育てる工芸・美術系の大学や研究所も揃っている。また、優れた作品を収蔵、展示する充実した美術館も多い。そうした環境の中から、「伝統工芸」の概念にとらわれない新たな工芸・アートを創造、発信していこうという取組が生まれている。

特に、アーティスト、デザイナー、文化人、経済人、市民などが参加する認定NPO法人「趣都金澤(しゅとかなざわ)」は、石川県金沢市において、工芸に特化した国内でもまれなアートフェア「KOGEI Art Fair Kanazawa」を毎年開催し、新たな工芸のマーケットをつくるべく取り組んできた。また、エリアを北陸三県に広げ、北陸の特色ある会場を舞台に日本の工芸・アートを世界に発信する取組を進めており、北陸の新たな魅力を紡ぐとともに工芸を捉えなおす新たな機会を提示してきた。そのメインプログラムの一つが、2020年度に「日本博」に参画して企画された「GO FOR KOGEI」である。

約11万人が来場した「GO FOR KOGEI 2023」

「GO FOR KOGEI」は、秋元雄史(あきもとゆうじ)氏***を総合監修・キュレーターとし、2021年と2022年に勝興寺(しょうこうじ)(富山県高岡市)、那谷寺(なたでら)(石川県小松市)、大瀧神社・岡太神社(おおたきじんじゃ・おかもとじんじゃ)(福井県越前市)を舞台として、工芸、現代アート、アール・ブリュット****にわたる気鋭の作家を紹介する特別展を開催した。

テキスタイルデザイナー・須藤玲子(すどう れいこ)の作品でファブリックのインスタレーション「扇の舞」。富山県高岡市の勝興寺(しょうこうじ。本堂等は国宝指定)の渡り廊下が多彩な扇の回廊になった。(「GO FOR KOGEI 2021」より) Photo: Masahiro Katano

2023年度については、「日本博2.0」に参画し、富山県富山市の富岩(ふがん)運河エリアを会場に、昨年(2023年)9月15日から10月29日にかけて、展覧会「物質的想像力と物語の縁起―マテリアル、データ、ファンタジー」を開催した。来場者には和英併記のガイドブックが配布され、外国人を対象とする見学ツアーや国際シンポジウムも実施され、約11万人が来場した。

富山県富山市にある桝田酒造店の酒蔵(さかぐら)の扉を飾る葉山有樹(はやま ゆうき)の作品「双竜」。陶芸家として自らが磁器の紋様として描いてきた図柄をベースとした作品。(「GO FOR KOGEI 2023」より) Photo: Watanabe Osamu

「GO FOR KOGEI 2023」は終了したが、その展示内容の詳細は、Webページにて和英併記で解説・紹介されており、オンライン上でも楽しむことができる(URLはコラムに掲載)。また、一部作品は通年で鑑賞可能で、2024年にも秋頃の開催が予定されている。興味のある方は、ぜひご覧いただきたい。

彫刻家・コムロタカヒロが創造した空想上の木製のドラゴン。画像左から、「Dog Dragon」「Savage Dragon」「Bat Dragon」「Demonic Dragon」。高さはいずれも約149〜150㎝。(「GO FOR KOGEI 2023」より) Photo: Watanabe Osamu
「GO FOR KOGEI 2023」の会場となった中島閘門(なかじま こうもん)エリア Photo: Watanabe Osamu

能登半島地震の影響について

2024年1月1日、北陸地域でマグニチュード(M)7.6 の地震が発生した(令和6年能登半島地震)。そのため、工房やギャラリーが損壊した作家も少なくない。北陸の工芸・アートの発展が継続されるように、今後の復興が望まれる。

「GO FOR KOGEI」のWebページ
» https://goforkogei.com/

* 文様染めの一つ。文様の輪郭にあらかじめ糊を置き、輪郭に染め色が付かないようにして染めることで繊細な模様を描く。京都の京友禅、石川県の加賀友禅が知られる。
** 鋳型に鉄や銅などの溶けた金属を流し込んで制作する。富山県高岡市の地場産業となっている。
*** 東京藝術大学名誉教授、金沢21世紀美術館特任館長。「金沢・世界工芸トリエンナーレ」などに携わり、2021年から「北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI」をディレクション。
**** 「生の表現」を意味するフランス語。既存の潮流に左右されない表現を指すことが多い。